「未経験で経理」
全く未知の世界ですよね?
どんな業務が待っていて、何をして評価されて、どのくらいの収入なのか・・・
僕は28歳の時、未経験、資格なしの状態で、非上場の中小企業経理となりました。
それから6年で年収は870万円とありがたい評価をいただいています。
参考:転職サイトDoda:経理職の平均年収データ(Dodaの調査結果)
Doda経理職の平均年収データ
それまでには数々のハードルがありましたが、それを乗り切ってきてたくさん学んできました。
今回は経験を元に「中小企業経理の業務内容」と「必須の知識とスキル10選」
を紹介しようと思います。
もちろん会社によって業務は様々だと思うので当てはまらないこともたくさんあると思います。
でも「そうか!」「あ、これうちでやってみよう」とか思って少しでも思っていただけたら幸いです。
またこれから転職や就職して経理になる人は、こんなことをイメージしておけばいいのか!って感じで見てみてください!
ちなみに・・・中小企業の経理、特に零細企業は
本やネット検索して出てくる「経理の1日の流れ!」などは全く当てはまらないと考えたほうがいいですよ。
ルーティン業務だけじゃない。突発的、かつ異例、専門外も全部自分の業務です。
中小企業の経理は「経理」という名の「何でも屋」なのです。
特に未経験の方!そこだけはよーく頭に入れてくださいね!
未経験からの経理、中小企業ではこんな業務内容をやってます。
経理
一般的な経理業務です。
と言ってもよくわからないですよね。
ものを買ったりサービスを契約すると
契約書、請求書、領収書が発生します。
それらの作成、送付、承認、送金、仕訳入力、書類管理
会計ソフトでそれらの仕訳により試算表が出来上がっていき、それをチェックしていく。
あとは納税、給与、関連
簡単に言ったらそんな感じです。
この記事をみてくださってる人はここに関しては大体想像できると思うのでここはこれくらいで。
財務
財務とは未来会計、つまり今後の予定や準備に関する事です。
僕がやっていることは
・事業部ごとや会社全体の事業計画の策定
うーん、比重は重いのですがたった2つだけみたいになっちゃいました。笑
具体的には、通常の運転資金、新規の投資物件、その他の融資を銀行に依頼する際の担当です。
融資を受けるための根拠資料を揃えたり、その資料の説明をします。
事業計画は、各事業部の状況を確認して今後の売上額の予想を立てます。
その数字が妥当かどうかのチェックもします。
それを集約、あとは費用や利息の今後の予定を足して、決算の見込を立てます。
未来のことなので確実な数字はもちろん出ませんが、利息や減価償却費、固定資産税、他固定費は見込みを立てられますのでしっかり計算しています。
総務
これが結構幅広くて・・
人事、労務、法務も入っています。
登記、各種規定、契約、訴訟、社内法務
取締役会、株主総会の準備と議事録
ざっくりいうと経営者と営業部がしない雑務の「全部」です。
数年やればある程度は経験できるのですが、1回しかない業務ももちろんあるので
その都度調べて対応します。
このジャンルに関しては、社労士、弁護士、行政書士、役所とやりとりをします。
実際、先生が書類作成、申請などをして、こちらは動くことがない、といったこともしばしばありますが、フルまかせではないんです。
先生らに情報を正しく伝えて、完成物が正しいかどうかは確認する必要があります。
情報システム
社内インフラのことですね
PC、サーバー、セキュリティ、複合機などは当たり前ですよね。
最近はいろんなSaaSも普通に使う時代になってきましたし余計に必要な業務です。
そういった会社にあったサービスの選定、契約、設定、維持管理
入社時や古くなって入れ替えの対応
従業員への指導やヘルプの対応(これ結構多いです。)
IT系で困ったら全部こっちの仕事。
そんな感じです。
経営補佐
財務資料を元に、今後どうしていくか、どうするべきかの話し合いをする際のお助けです。
「こうしたい!こうしよう!」という経営者の希望に対して
決算上の変化
今後の事業計画の変化
従業員の動きとそれが可能かどうか
法的、税務上のリスク
コスト
などを確認して最適な道筋を提案します。
ゴールを経営者が定め、そのルート検索をする と言った感じですね。
実は、業務の中でここが真髄だと思っています。
経理が習得すべき知識とスキル10選
必要知識・スキル①:経営者の考え方
まず大前提に、経理の人間と経営者はかなりかけ離れた特性を持っています。
簡単にいうと攻め思考が経営者、守り思考が経理です。
経営者は売上、利益を伸ばすために頑張る。
経理は経費の削減、効率化を頑張る。
お互い守っている領域が異なるんですよね。
そもそも経理に思考のウェイトを置いていない場合が多いという感じです!
だから、意見が合わなかったり、なぜそういう考えをするんだろう?
ということもあると思いますが、そこは先ほど書いた
「経営者と経理では特性の違いがある」
ということを頭に入れておいてください。
必要知識・スキル②:銀行の考え方
僕は銀行経験ではないですが、窓口担当として色々な銀行、役職の方と話をして得たことをお伝えします。
「結果が全て」 ではない
これは決算数字だけで判断されるわけではないということです。
良かった数字が、実力なのか偶然なのか
悪かった数字の原因がわかっているのか、対処ができるのか
そういった分析や管理ができているかどうかを見られます。
担当者、支店は会社サイド
これには賛否両論あるかもしれませんが、僕はそう思っています。
会社 vs 銀行 ではなく 会社&支店 vs 本部 ということです。
融資を受ける際、ある程度の金額の場合は本部まで稟議が行きます。
経営者の中には銀行に情報や資料をあまり渡したくないといった考えの人もたくさんいます。
どうしても人が絡むので情報流出にも繋がるから、という理由ですね。
でも僕はそれが融資を難しくする1つの理由だと考えます。
条件の良い融資を勝ち取ってもらうために
担当者、支店に資料や説明という武器を渡して本部と戦ってきてもらう。
それが正しいやり方です。
ですので、わかりやすく、使いやすく、かつ説得力のある武器(資料)を適切に準備して渡すのです。
他にも
・毎月試算表をしっかり作ることが信用に繋がる
・質問に確実に回答した資料を出す
当たり前なのですが、多くの人があまり考えていない、またはできていないのが現実のようです。
必要知識・スキル③:税務署の考え方
調査官、複数の税理士、元調査官などいろいろな方から話を聞いてきました。
ただ、ここについては深い税務上の知識がないと理解ができないかもしれません。
しかし、そのような知識をつけようと思って税理士試験を頑張るなども必要ないです。
自分自身簿記2級どまりですし、税理士のような他ジャンルの顧問先で色々な処理をすることもありません。ですので自分の会社の範疇で起こりうることを
「税法のどの条文にかかってくる取引になるのか」
「この先生はこう言っていたが、あの先生はこう言っている。答えはどっちだ?」
「これが否認される事項なら、どういった条件なら問題ないのか」
このようなことを考えながら業務をしたり、税理士にどんどん質問していれば次第に税務署、調査官の気になる点、気をつけるべき点、準備しておく事項がわかるようになります。
「税理士に全部任せてますー」
これ絶対NGですよ!
必要知識・スキル④:簿記2級
これはなくても問題はないと思いますが、まず税理士と話をする基礎知識をつけるのにこれくらいの会計知識は欲しいと言ったところです。
勘定科目、資産、負債、純資産 このレベルの話もできないレベルだと話になりません。
銀行、税理士、会計士などと話をする為に「共通言語を学ぶ」と言った感じです。
経理=家計簿をつける人ではありません。
例えば、経理実務の基本的な知識として、簿記の取得を目指すことをオススメします。
簿記は、基本的な会計処理や財務諸表の作成方法を学べる資格であり、業界標準とされています。
もちろん原価計算のない会社などでは原価計算の勉強が意味ないように感じられますが、そこはそういうもんだと割り切って頑張りましょう。
転職などでいつか役立つ時もくるかもしれませんよ!
参考:日本商工会議所の簿記資格情報: 日本商工会議所の公式サイト
必要知識・スキル⑤:Excel
先に言っておきますが、Excelをしっかりやっとかないと経理、財務としては役立たずになっちゃいます。
会計ソフトから出力するものをどうやって整形して、欲しい情報を抽出するか
かつメンテナンスしやすくて、他人でもわかりやすい
そういった操作がかなり必要になります。
しかもテクニックを知ってないと大量の手作業で毎日残業もありえます。
大手ならデータの入力から出力まで全てソフトで完了して
Excelでの資料作成に頼ることもないかもしれません。
(大手の業務知らないので詳細はわかりませんが。。。)
ただ中小では欲しい全ての資料をシステム化するほどの資金もありませんし
新たにシステムを作るという概念すらないです。
基本的には、ある情報を元に各個人のセンスで資料が作られていきます。
wordも使いますが、ほとんど経理、財務だと数字に関するものなのでExcelですね
がんばりましょう!!
必要知識・スキル⑥:総務
ここに関してはかなり守備範囲が広いので、まずは「総務の本」みたいなものをざーっと読んで
会社法務、人事、労務とかを浅くでも知っておき、その業務に直面した時に深く掘り下げれば良いと思います。
ただ、その最初の浅く広くくらい知っておかないとワークフローが立てられません。
取締役会ってなんですか?
社会保険ってなんですか?
ってレベルだと弁護士、社労士とも会話が成り立たず依頼すらできない状態に陥ります。
ここも簿記と同様で、外部に依頼できるレベルでよいので共通言語の習得を目標に知識をつけていきましょう。
必要知識・スキル⑦:IT
これも先ほど同様ですが、PC、ネットワークの表面上の知識くらいは知っておきましょう。
「OSってなんですか?スペックの確認ってどこでみるんですか?メモリ?SSD?VPN??」
って言っていたら管理を任せている会社とも話ができません。
自分の使っているパソコンの基本的な構造
どうやってインターネットに繋がっているか
オンプレ、クラウドとか
興味ない人はとことん知りません。
社内にはそういう人がたくさんいます。
そういう人のヘルプができるようになっておきましょう。
僕自身PCが各家庭に普及した時代に興味を持って遊んだり、レコーディングエンジニアの経験があったのでエラーや特殊な使い方もその時々で学んできたので基礎的な知識はついていました。
これは時間と興味によるものだと思うので、PCを好きになって
「これ、どうやったらできるんだろ?」
「これってなんだ?」
ってどんどん調べていけば身に着きます!
興味のあることをPCでどんどんやってみましょう!
動画でもデザインでもブログでも販売でもやりながら勝手に知識をつけていきましょう。
必要知識・スキル⑧:コミニュケーション
経理は是々非々でドライなイメージをもたれがちです。
ただ僕自身はあまりそういった人間ではなくなるべく臨機応変に、といった方針で業務をしています。
期日すぎたから受け付けませんとか、ちょっとした様式の違いでやり直しをしたりとか
正直あまり意味のないことには時間をついやさず、なるべく従業員がスムーズにメインの業務に集中できるようにしています。
その一環で、他部署の人とも普段から雑談したり、困りごとや、完全プライベートなグチを聞いてみたり。
そう言った従業員間のコミニュケーションがとても大切です。
なぜかというと
財務として、数字を各部署にヒアリング。
基幹システムの入れ替え。
などいつでも円滑に情報収集できるようにする必要があります。
そのためには普段からの関係性が大事ということです。
これは社内だけではなく社外の人に対しても同様です。
士業の先生、銀行、その他サービス関連会社
「関わりやすい人」と思ってもらわないと、ちょっとした情報すら入ってきませんし、学べることもなくなっていきます。
この点は何歳になっても、役職が偉くなっても忘れてはいけないと思っています。
必要知識・スキル⑨:提案力・他者視点
これは営業などで考えたもらったらわかりやすい事例です。
自分の考え、思いをわかりやすく相手に伝える。
時には資料や周りの人を巻き込みながら伝える。
そういったスキルは経理にも必要です。
銀行への融資依頼
経営者への提案
従業員への指示
資料作り、言い方、つまり伝え方がとても大切です。
人間関係が苦手で、数字だけ打ち込む仕事に就きたいと思っているのならば
中小企業の経理は向いていないと思います。
相手の立場に立って、相手の知識レベルに合わせて自分の考えを伝える。
そのようなスキルをいろいろな本や動画、
日常でも「この人に言われると納得できる」と言った人の話し方や資料作り
よーく観察してマネするのも良いでしょう。
必要知識・スキル⑩:問題解決力
問題と言ったら大袈裟かもしれませんが、日々突発的な業務が入ってきます。
会計業務をほとんどしない日もあります。
定例業務外の課題に対して、どのようなアプローチで解決にむかうかイメージするスキルが必要です。
広く浅い知識はここで役に立ってきます。
どの先生が専門なのか
どれ位の時間でできるか
どのくらいの費用がかかるか
税務上の問題
法務上の問題
会計上どうなるか
これがどんな事項、問題でもスッとでてくるようにします。
1つ1つ解決していきながら、あ、つまづいた。ではなく
全貌を最初に把握してフローを作成し、可能なところは同時進行したり、部下に依頼したり
結局「何でも屋」になるにはこれが必要です。
あまり自信がない人は、家族の困りごと、友人の困りごとを解決するところからチャレンジしてみるとよいかもですね。
マイナンバーカードの取り方
NISAの概要
旅行のプラン立てと全工程の予約
みんな面倒で調べたくなかったり、用語が専門的で理解できないとかで後回し。
そういうことを噛み砕いて説明、手配できるようになったら「何でも屋」の第一歩です!
わからない→調べる→理解→わからない→調べる→理解
この繰り返しができるかどうかです!
まとめ
とても長くなってしまいましたが、これが今やっている業務と、必須だと思う知識です!
一気には無理なので、自分の得意なところから1つずつでも伸ばしてみてはどうでしょうか?
また、転職で中小企業経理を考えている人には現実がわかってもらえたかと思います。
ただ中小企業といっても10人もいないほぼ個人商店のような零細から数百人で盤石な組織体制のある会社まで、様々な組織が存在します。
小さければ小さいほど、何でも屋の範囲は広がります。
自分のやりたい方針、経理を極めたいのか、いろいろ幅広く飽きの来ない仕事がしたいのかを考えて会社を選ぶとよいかもしれません!
最後に、年収870万円を達成した理由としては「稼いでいる会社」であったことが最重要かもしれません。
どれだけ会社に対して、価値のある仕事をしても本業の稼ぎがないと給料は増やすことができません。
トレンドに乗っている会社、柔軟な発想で大きく伸びそうな会社、そういった会社であれば可能性があると思います!
それか何でも屋として売上の改善まで範囲を広げることができたらいいかもですね!
いずれにしても、自分の特性に合って、ある程度本業がうまくいっている会社を見極めるのが最重要です!
頑張ってみてください!
ここまで読んでいただきありがとうございます!
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